・家族の思い出を残したいのになんだかいい写真が撮れない。
・大切な思い出をもっと魅力的に残したい。
・もっと家族で見返したときに楽しめる写真を撮りたい。
こんな悩みをもつパパやママさん向けの撮影テクニックの話です。今回は2回目!(第1回「広角で撮ろう」もぜひご覧ください)
細かいテクニックは無数にありますが、年間3万枚の家族スナップ写真を撮ってきた私の経験に基づいて一番抑えておきたいベーシックなテクニックを解説しています。
ポイントは「あとで見返したり、家族で写真をみるときに楽しい思い出話ができる写真」ということです。 我が家ではこうやって撮った写真を家族で見返していつも楽しんでいます。
こちらは全5回のシリーズものとなっています。
- その1:広角で撮ろう
- その2:パンフォーカスで撮ろう
- その3:複数の視点で撮ろう
- その4:シャッターチャンスでは複数枚撮ろう
- その5:常に持ち歩こう
それぞれの回に作例もつけているので、皆さんのイメージがより膨らんで楽しい写真ライフとなりますように。
「当たり前ですけど、このテクニックは使わないとダメ、とかそういうものじゃないです。『一つの参考例』として、自分の写真のイメージを膨らますために活用してくださいね!」
どんな写真を家族スナップで目指したいのか(再掲)
ちなみにテクニックに入る前に、すこし「どんな写真が家族で楽しめるのか」を考えてみましょう。
私は家族スナップ写真とは「構図がいい」とか「美しい」とかそういうことじゃないと思うんです。
「その写真をもとに家族で会話ができること」だとすると、その写真のポイントは私が考えるに2つです。
①忘れがちだけど確かにあった「日常」を写していること
②「日常」の情景を思い出すいろんな情報がたくさん写真に写っていること
だと思います。
こういった写真をみて「こんなことあったあった」「ねー」とか「この時○○だったんだよ!」「え、知らなかった」みたいな会話が弾むのがとても楽しいのです。
では、そんな写真を撮るテクニックの1つ「パンフォーカス」を具体的に解説していきます。
先に結論「パンフォーカスはここがいい」
先に結論を書いておきます。
パンフォーカスは色んなところにピントがあっているので、写真から得られる情報が多い写真です。こういった写真はそれぞれ写真を見て家族が様々な思い出を話すきっかけになり、家族の会話が弾みます。またピントを外しにくいので、写真も失敗しにくくなります。具体的なやり方としてはF5.6くらいまで絞ればOKです。F9~F10まで絞らなくてもこれで十分色んな部分から読み取れる写真になります
さて、それぞれの要素を解説していきます!
そもそも「パンフォーカス」って何?
キヤノンのサイト写真用語サイトでは以下のように言われています。
パンフォーカスとは、近景から遠景までピントが合った写真のことを言います。
https://ptl.imagegateway.net/contents/original/glossary/index.html
つまり色んなところのピントがあった状態の写真です。
これの逆がボケ表現です。対象にピントがあい、背景はボケている(玉ボケとか言いますね)。人物を際立たせるポートレートでよく使われる手法です。
写真を始めたり、ポートレートの手法を調べるとこのボケ表現が良いとする話がよくあります。いわく本格的なカメラはこのボケ表現が違うのだと。確かにフルサイズセンサーを積んだ一眼カメラなどの強みの1つはこのきれいなボケ感です。
iPhoneのポートレートモードも人物や対象を認識すると画像処理でそれ以外をボカしてきますね。
きれいですよね。玉ボケ。人物の描写を際立たせるために必要なテクニックだと思います。
かわいいお子さんや素敵なパートナーの写真をこうやって撮るのも全然よいと思います。
でもパンフォーカスも意識してほしいんです!
私は絶対に、家族との写真にはパンフォーカスの写真を入れてほしいのです!
パンフォーカスの特徴
メリット①:情報量が多い
パンフォーカスの特徴は「写真の情報量が多い」です。色んな部分のピントがあっているので、色んな情報が読み取れる写真となっています。
これはテクニック1「広角」にも共通する部分ですね。
情報量がおおい写真は、みんなで見た時に「あ!あれってこうだったよね」という会話が弾むきっかけがたくさんあります。
映り込んでいた背景の人物についてだったり、忘れかけていた普段遣いしていた小物など。そういったものにもピントがあっているので、思いだしやすくなっているのです。なので家族写真としてパンフォーカスは面白いのです。
メリット②:ピントを外しにくい
更にパンフォーカスにするとピントを外してしまうことが減ります。
最近はAF機能もすばらしく向上しているので、こういったテクニックでカバーすることもないかもしれませんが、広い範囲でピントが合うような写真を撮ろうとするので、メインで写そうと思った人のピントを外してしまうことも少なくなります。
デメリット:わかりにくい写真になってしまう可能性がある
デメリットはまさに裏返しです。写真の情報量がおおいので「この写真なんだっけ?」みたいな写真になってしまうときです。
何を切り取ろうとしたのかがわかりにくい街の風景とかをイメージしてもらうといいかもしれません。
(でも意外とそういう街の風景写真とかも、数年後にみんなで見て「あ!あの街じゃん!」とかってなったりして楽しかったりもします)
具体的なパンフォーカステクニック
具体的なパンフォーカスのやり方は簡単。絞りを絞ることです。いわゆるF値といわれるものを上げていくことになります。
目安としてはF5.0~F5.6を一つの基準と考えましょう。実際のスナップ写真のテクニックや風景写真としてのテクニックだとF9.0やF10まで必要だと書かれていることが多いですが、家族スナップ写真としてはF5.0~F5.6で比較的広い範囲でピントが合います。
これを理解するには被写界深度をしっかり理解しましょう。
必要な被写界深度を理解しよう
被写界深度とは、ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のことです。
被写界深度は絞り値(F値)、レンズの焦点距離、撮影距離(被写体とカメラの間の距離)で決まります。
被写界深度 浅い | 被写界深度 深い | |
---|---|---|
絞り値 | 小さい(絞りを開く) | 大きい(絞りを絞る) |
焦点距離 | 長い(望遠) | 短い(広角) |
撮影距離(被写体とカメラの間の距離) | 短い | 長い |
私の使っているGRⅢの28mmだとF5.6での絞りで1/2/3/5mでの合焦位置ごとに、被写界深度はだいたい以下のようになります。
(もっと詳細の比較は「GRⅢの被写界深度とスナップテクニックを徹底解説」をご覧ください。)
私の場合は室内だと子供を2~3mの距離で撮ることが多く、屋外だと3~5mの距離で撮ることが多いです。
室内の場合だと後ろの様子はだいたい後ろ3mくらいがあっていれば、かなりの様子がわかります。そのため、F5.6で合焦距離2~3mで十分なピントと情報量になります。
屋外だと子供との距離も少し離れるので、3~5m以上の距離感で撮ることが多いです。もちろん風景の中に溶け込むような撮影をするときはもっと離れています。つまり屋外であれば5mもあれば背景は被写界深度∞となるので、全てにピントがあっていることになります。
このようにF5.6を基準に考えるとある程度の汎用的にパンフォーカスの写真を撮ることができると思います。
ここを基準にもう少しパンフォーカスにしたい or いやもっとボケさせたいを判断して絞りを調整するといいと思います。
絞り優先AEモードで撮る
絞りと被写界深度を優先で考えますので、カメラは絞り優先AEモードで撮るべきでしょう。
絞り優先AEモードでは、絞り値を定めるとそれに合わせてシャッター速度やISO感度を調整してくれます。私は基本的にこの絞り優先AEモードでF5.6に設定して撮っています。子どもを撮るときにはシャッター速度が1/100以上あったほうがブレにくいので、GRのISO感度設定で低速限界値を100に設定しています。
このあたりの詳細は「子どものスナップ写真のレベルをあげる秘密のテクニック3選」で解説をしています。良ければご覧ください。
作例
作例1
家族で串かつ田中にいったときの写真です。
全てにピントがあっているわけではないですが、比較的色んなところにもピントがあっています。それによって、全体的にちょっとごちゃっとしていますが、それが串かつ田中っぽい感じになっているんじゃないかと思ってます。テーブルの上のごちゃごちゃ感とか。
この写真を見ると私は「あぁチンチロをやってめちゃくちゃ酔っ払ったなぁ」という記憶を思い出し、妻はちょっと苦い顔をします。
作例2
個人的に結構気に入っている写真です。児童館でミニカーにのる長女です。
背景がボケすぎていないが故に、娘が乗っているアンパンマンのミニカー以外にも後ろに次に乗るラインナップが勢ぞろいしている感じがあり、微笑ましくなります。ただ実際はアンパンマンのミニカーにしか乗りませんでした。これが一番のお気に入り。
娘はこの写真をみると今でも「アンパンマンカー!」と叫びます。「これ、大好きだったよね」という話をしていると、時々「今度もう一度これ乗る」となって週末のお出かけ場所が児童館になったこともあります。
作例3
食事風景はパンフォーカス気味に撮るといいな、と思います。食べているご飯と人物の両方にピントが合いやすく、ご飯の記憶も一緒に呼び覚まします。
これは次女のお宮参りのあとの食事です。いつもとは違うお店にはいり、長女がこのピザをとても気に入ったのを妻とよく思い出して話しています。
作例4
何気ない写真だと思います。でもこういう何気ない写真が少し時間が経つとすっごく大事になるんです。
これは保育園からの帰り道。この保育園もいずれ通わなくなるし、この道も通らなくなるかもしれないんです。人物だけにフォーカスするのではなく、道路や背景も全体的にピントがあっているので、「あぁこの道ね」と家族では思い出せるのです。それが会話のきっかけになったりして「あの保育園いい園だったよね~」などと会話が続いたり弾んだりするのが、我が家での一幕です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
この記事の簡単なまとめです。
・パンフォーカスの写真とは近景から遠景までピントが合った写真のこと
・パンフォーカスの写真だと情報量が多く、それが後々みんなの記憶を呼び起こすきっかけになる
・パンフォーカスの写真だとピントを外しにくく、写真が失敗しにくい
・パンフォーカスの写真はF値を絞る。F5.6でも結構広範囲でピントが合う(被写界深度を理解しよう!)
写真を始めていいカメラを買ったときは綺麗なボケ写真にのめり込みそうになりますが、パンフォーカスも忘れないでください。
パンフォーカス写真ならではの良さを理解したうえで、写真のバリエーションを増やしていけるともっと楽しい写真ライフが待っていると思います。
ぜひ家族スナップ写真を増やして楽しんでいただけると!楽しい時間が増えることを願っています!
次回の第3弾は「複数の視点で撮る」です!